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朝日新聞の気がかりな記事~地下水、「満タン」戻った 渇水対策や企業誘致に活用へ [インフォメ-ション&レポート]

きょう(8/20)、朝日新聞夕刊一面トップに気がかりな記事が載っていたのでストックしておきます。

地下水の汲み上げを規制してきたことで地下水位が上がってきたので、国土交通省は地下水を「水源」として活用するための研究を始めた、という記事だ。
研究を始めたこと自体は結構なことだが、国土交通省がこの通りの考えであるのか、あるいは記事を書いた記者の問題意識がこの程度なのか、記事の中身にはいろいろと疑問をおぼえる。

国土交通省が今夏から解析の対象としている井戸は、関東平野、濃尾平野、筑後・佐賀平野のそれぞれで、たったの5~10カ所程度という少なさ。こんなサンプル数で、はたして解析ができるのだろうか。
しかも、わずか2年で「地下水の採取制限の目安など地下水の管理基準」を作り、自治体に配って、工場を誘致する際の「呼び水」にさせるのだという。

目安としての管理基準を作ったところで、規制緩和をバックに工場誘致に走る自治体に、取水をコントロールする能力がともなうのだろうか。

何より、~地下水、「満タン」戻った 渇水対策や企業誘致に活用へ~という派手な見出し。
あまりにも楽観的過ぎるのではないだろうか。
渇水対策として地下水を利用するというが、渇水の時には地下水も減るのだ。

たしかに東京都では、地域によっては水位が数十メートル回復し、東京駅や上野駅が浮力で浮き上がってしまうほどだというのは事実のようだが、「この半世紀で地下水という『貯金』がたまり、元に戻った状態」だという国交省水資源政策課のコメント、真に受けてよいものだろうか。

この半世紀の間の揚水規制によって、地下水位が上昇してきたことは確かだとしても、この半世紀の間に地面の被覆率は激増し、特に東京などの大都市では、雨が地面にしみ込む場所自体がどんどん消えている。地下水涵養の条件は、格段に悪くなっているのだ。
これで地下水が「元に戻る」はずがないことは、誰が考えたってわかることではないか。

東京の地下水って、本当に増えているのだろうか。
地下水位が上がることと、地下水が増えることは、実はイコールではない、という説があると聞く。
水を少ししかはっていない風呂に人がつかれば水位は上がる。
東京都心には、無数ともいえるほどたくさんのビルが建っている。
大きなビルの基礎を、網の目のように地下に埋め込めば、人が入った風呂と同じ原理で地下水位は上がる。
東京の地下水位上昇は、そうやって起きているのだという説だ。

記事を書いた記者がこういうことを勉強していれば、こんな得意満面の記事ではなく、記事の中身は違ったものになったでしょうに。
はてさて、地下水関係筋からどのような評価が出てくるか、注目していきたいと思います。

地下水、「満タン」戻った 渇水対策や企業誘致に活用へ 2010年8月20日13時33分朝日新聞夕刊
http://www.asahi.com/national/update/0820/TKY201008200188.html

----(記事の転載)---------
地下水、「満タン」戻った 渇水対策や企業誘致に活用へ 2010年8月20日13時33分

 かつては地盤沈下の原因になるほどくみ上げすぎた地下水が、利用を規制していたこの半世紀ほどの間に十分たまってきたとして、国土交通省は地下水を「水源」として活用するための研究を始めた。再び地盤沈下が起きないように管理しながら利用するための「指南書」をつくり、自治体の渇水対策や企業誘致に役立てたい考えだ。

 国交省は今夏から、地盤沈下が続いてきた関東平野、濃尾平野、筑後・佐賀平野で、それぞれ5~10カ所程度の監視井戸を対象に水位や地盤変動の解析を始めた。取水と地盤沈下の関係などを調べ、2年ほどかけて、地下水の採取制限の目安など「地下水の管理基準」を作る。地盤沈下が起きないように管理しながら地下水を活用する方法をまとめ、全国の自治体などに配るという。

 自治体や企業が一定の規模の地下水を使えるようになれば、瀬戸内海沿岸など渇水が起きやすい地域で非常用の水源にしたり、工場を誘致する際の「呼び水」にしたりすることが可能になる。

 規制から積極活用へ転換するのは、地下水量が増えてきたからだ。国交省によると、地下水を取りすぎて各地で地盤沈下が起きた1950年代以降、国や自治体は工業用水法や条例により、井戸の深さや断面積で制限するなどして取水を規制。地下水のくみ上げ量は現在、ピークだった70年の3分の1程度に減少している。その結果、徐々に地盤沈下は収まり、地下水の水位は上昇。東京都では水位が数十メートル回復するなど「この半世紀で地下水という『貯金』がたまり、元に戻った状態」(国交省水資源政策課)という。

20100820朝日新聞 地下水利用のイメージ.JPG

20100820朝日新聞 代表的地域の地盤沈下経年変化.jpg

 ただ地域差があり、現在も地盤沈下が続いているところもある。今回は地盤沈下が沈静化している地域や地下水を使用していない自治体に、利用を提案するのが狙いだ。

国内で雨や雪から地下にしみ込む水の量は年間1400億トン、日本の地下水総量は約13兆トンに達すると推定される。水がたまった巨大な器のような「地下水盆」が関東平野や新潟平野など主なもので約60ある。しかし現在、国内で使われる地下水は年間約120億トンで、水の使用量全体の1割程度にすぎない。

 水資源政策課は「再び地盤沈下を起こさないためにも、規制緩和には難しい問題が残るが、管理手法を確立して活用の可能性を広げたい」としている。

 研究所レベルでは地下水管理の先端的な取り組みも進んでいる。独立行政法人・産業技術総合研究所(茨城県つくば市)は、地下水の流れを人為的に変えたり、常に15度程度と安定している地下水の熱を活用したりする技術も開発した。同研究所地下水研究グループの丸井敦尚・グループ長は「現状は自然の地下水位に戻った状態。技術情報に基づき、研究所としても地域にあった地下水予測などを提供していきたい」と話している。(鳴澤大)
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参考
国土交通省土地・水資源局水資源部:
http://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/index.html

国土交通省土地・水資源局水資源部 地下水利用と地盤沈下対策について:
http://www.mlit.go.jp/tochimizushigen/mizsei/f_groundwater/index.html

国土交通省土地・水資源局国土調査課:
http://tochi.mlit.go.jp/tockok/index.htm

国土交通省土地・水資源局国土調査課 地下水マップ:
http://tochi.mlit.go.jp/tockok/inspect/landclassification/water/w_national_map_cw.html
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